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福島地方裁判所 平成6年(行ウ)7号 判決

原告

飛知和東八(X1)

飛知和良子(X2)

有賀克彦(X3)

星一(X4)

海上晃吉(X5)

田崎孝(X6)

野崎吉美(X7)

右七名訴訟代理人弁護士

関哲夫

被告

(泉崎村長) 海上博之(Y1)

(泉崎村収入役) 佐々木一恵(Y2)

右両名訴訟代理人弁護士

矢田次男

栃木敏明

小川恵司

右両名訴訟復代理人弁護士

新穂均

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  争点1(一)について

1  法二四二条二項本文は、普通地方公共団体の執行機関、職員の財務会計行為がたとえ違法又は不当になされた場合であっても、これに対し監査請求又は住民訴訟をいつまでもなしうるようにしておくことは普通地方公共団体を巡る法的関係の安定性を損ない、好ましくないとして、当該財務会計行為から一年間の監査請求期間を定め、これを経過してなされた監査請求は不適法であると定めている。しかし、当該財務会計行為が普通地方公共団体の一般住民に隠れてきわめて秘密裡になされ、右財務会計行為から一年間を経過してはじめて明らかになったような場合にまで、右の監査請求期間を徒過した監査請求又はこれを前提とする住民訴訟を不適法なものとすることは、普通地方公共団体の財務の適正を確保する住民訴訟制度の機能を著しく狭めるもので相当でない。そこで、法二四二条二項ただし書は、「正当な理由」があるときは、当該財務会計行為のあった日又は終わった日から一年間を経過した後であっても、普通地方公共団体の住民が例外的に監査請求できると定めた。したがって、右のように、当該行為が秘密裡になされた場合に監査請求が監査請求期間を徒過してなされたことに正当な理由があるか否かは、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものと解される。

ところで、前提となる事実によれば、泉崎村は平成四年三月三一日及び同年八月六日の二回にわたって、本件財団設立のための出資金として金一億五〇〇〇万円ずつ合計金三億円を支出したこと、原告らが本件住民監査請求を行ったのは平成六年三月一〇日であったことが認められ、本件住民監査請求は右各支出からそれぞれ一年間を経過してなされていることが明らかである。

したがって、本件訴えが適法であるかどうかは、右の法二四二条二項ただし書の「正当な理由」があるかどうかによって決定されることとなる。

2  そこで、本件出資金支出前後から本件住民監査請求に至る経緯についてみるに、前提となる事実及び〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(一)  泉崎村は、平成二年一〇月ころ、本多及び飛永らから、本件財団の寄附行為案、募金趣意書、国際保健科学大学設立計画書及び国際保健科学大学設立計画と題する書面の提出を受け、本件大学誘致について検討を行ったこと(〔証拠略〕)、

(二)  平成三年一月一五日、本件委員会の基本規定が作成されたこと(〔証拠略〕)、

このころ、飛永らが泉崎村に対し、泉崎村から本件財団の基本財産とする趣旨で金三億円を出資して欲しい旨を要請し、泉崎村として了承したこと(〔証拠略〕)、

(三)  同年二月二〇日、本件委員会の第一回委員会が開催され、本件委員会設立に関する事項及び本件大学基本構想に関して報告がなされた外、右基本規定が承認され、本件委員会の各委員及び事務局員の選出が行われたこと(〔証拠略〕)、

(四)  泉崎村は同年四月ころ、本件委員会に対して調査を委託して、本件大学が泉崎村に適したものであるかどうか調査し、地方都市における大学計画調査報告書と題する書面が提出されたこと(〔証拠略〕)、

(五)  本件委員会が同年八月、国際保健科学大学設立計画書及び「国際保健科学大学設立計画 泉崎村キャンパス構想」と題する書面を作成し、泉崎村に対し提出したこと(〔証拠略〕)、

(六)  泉崎村議会平成三年第四回臨時会が同年一一月一三日、開催され、泉崎村が本件財団に対し、本件出資金として金三億円を支出することを内容とする、平成三年度の泉崎村一般会計補正予算案が提出され、同日可決成立したこと、その際の予算書には、本件出資金が本件財団設立寄付金として説明されていたこと、右議決の際に、本件大学泉崎キャンパス設立進捗表(以下「進捗表」という。)を配布したこと、翌日右補正予算の可決成立が新聞等で一般に報道されたこと(〔証拠略〕)、

(七)  被告海上が、同年一二月一六日開会の泉崎村議会平成三年第四回定例会において、財団設立を同月中に終了して文部省に提出して事務手続きを終了する意向である、と説明したこと(〔証拠略〕)、

(八)  岐阜プラスティック工業株式会社が、平成四年一月二〇日、金五〇〇〇万円を、東京リゾート株式会社が、同月二三日、金一億円を、泉崎村に対し、それぞれ本件財団設立寄付金として寄附し、泉崎村はこれを受領したこと(〔証拠略〕)、

(九)  同年二月ころ、「国際保健科学大学設立計画書、泉崎村キャンパス構想」と題する書面が作成され、泉崎村に提出されたこと(〔証拠略〕)、

(一〇)  同年二月二五日、本件委員会の第二回準備委員会が開催され、本件委員会設立後一年間の活動経過報告等が行われたこと(〔証拠略〕)、

(一一)  本件委員会は、同年三月ころまでに、「大学設置許可申請書」を作成し、泉崎村に対し提出したこと(〔証拠略〕)、

(一二)  泉崎村議会白石正雄議員(以下「白石」という。)が同年三月一〇日開会の同年第一回定例会において、本件財団の設立認可申請をいつ行ったか、同年二月に大学設立申請をしたかどうか等について質問したことに対し、被告海上が、同月一七日に文部省に対して本件財団設立申請を行っていること、平成六年に必ず開校したいと考えていると答弁し、さらに中野目が平成三年一一月一三日に議員に対して配布した進捗表どおりに設立作業が進捗しているし、平成四年二月一七日の申請は財団設立と学校法人の申請と同時申請であると説明したこと(〔証拠略〕)、

(一三)  本多は同年三月三一日、泉崎村に対し、同年二月一七日に、文部省に対して事前協議のための申請書を提出し、同月二七日に、文部省に対して本件財団の認可申請書を提出したと連絡し、本多及び飛永は、右同日、中野目に対し、右認可申請書に残高証明書を添付することが必要であるから、金三億円を送金するように要請したこと、泉崎村としては本件出資金として金三億円を寄付金によって調達する予定であったが、当時村には金一億五〇〇〇万円しか寄付金が集っておらず、本件委員会に対し、同金額だけを送金することでよいかどうかについて確認したところ、残金の金一億五〇〇〇万円は日米医学医療交流財団で一時立て替えをするが、五月末までに返金して欲しい旨回答があったこと、そこで、中野目らが第一勧業銀行五反田支店の本件委員会名義の普通預金口座に対して、本件出資金の内金として、金一億五〇〇〇万円を振込送金したこと(〔証拠略〕)、

(一四)  平成四年四月ころ、広報「いずみざき」に本件出資金として金三億円を支出することに関する記事が掲載されたこと、広報「いずみざき」は泉崎村村民の一世帯当たり一部ずつ配布される村の広報誌であること(原告有賀)、

(一五)  本件委員会が被告海上に対し、同年五月二六日、本件財団設立資金である本件出資金の残金一億五〇〇〇万円を、財団法人日米医学医療交流財団理事長本多名義の第一勧業銀行五反田支店の普通預金口座に送金するよう依頼した送金依頼書を提出し、泉崎村は右送金依頼書を同月二八日付けで受理したこと、右送金依頼書には、送金先を右のとおり指定する理由として、財団法人設立申請の書類提出期限の関係から、財団法人日米医学医療交流財団が本件財団設立資金を一時立替払いしたことを記載していたこと(〔証拠略〕)、

(一六)  中野目が同月二九日に残金一億五〇〇〇万円を送金しようとしたところ、飛永から、日米医学医療交流財団で決算監査があり、出納が閉鎖されているので、指示があるまで送金を見合わせて欲しい旨連絡があったこと、そこで、右同日予算を執行して、被告佐々木が同年八月六日の送金まで白河農協川崎支所で通知預金として保管していたこと(〔証拠略〕)、

(一七)  泉崎村議会同年第二回定例会が同年六月一九日から同月二二日までの会期で開催され、白石が被告海上に対し、「財界ふくしま六月号」の誌上に、本件財団設立の認可申請について、同誌が文部省に対し確認したところ、私立大学設置認可申請提出期限は同年四月三〇日であったが、本件財団についての右申請がなされた事実はないとの回答を得た旨の記事が掲載されたことを指摘し、同年二月一七日に本件財団の設立認可申請がなされたというのは真実なのかどうかと質問したのに対し、被告海上は右申請がなされたのは事実であると答弁したこと、右議会において、工場団地特別会計から一般会計に対し、金一億五〇〇〇万円を繰り入れ、これを本件財団の設立に出資することについて泉崎村長の専決とすることが可決されたこと、被告海上が右議決に基づき、工場団地特別会計から一般会計に対し、金一億五〇〇〇万円を繰り入れる専決処分を行ったこと(〔証拠略〕)、

(一八)  飛永は、同年八月五日、中野目に対し、日米医学医療交流財団に対する送金が可能になったと連絡し、中野目は、同月六日、第一勧業銀行五反田支店の日米医学医療交流財団の理事長本多名義の普通預金口座に振り込み送金したこと、被告らは振込先の通知でもって元来の債権者とは異なる者の名義に振り込み送金することができると考えていたこと(〔証拠略〕)、

(一九)  被告らは、同月二〇日、本多から同日発行の預り証書及び株式会社第一勧業銀行五反田支店の本件委員会宛発行にかかる同日現在の金三億五〇〇万円の普通預金残高証書を受領したこと、被告佐々木らは右により前記の日米医学医療交流財団に送金した金一億五〇〇〇万円が本件委員会に送金されたことを確認したこと、中野目は同月末ころ、本多から、本件財団の設立が認可される見通しとなったと聞いたこと(〔証拠略〕)、

(二〇)  泉崎村議会平成四年第三回定例会が、同年九月一六日から同月二一日までの会期で開催され、白石から、泉崎村から金三億円を本件財団に対し本件出資金として支出したはずであるから、それに沿った会計上の処理がなされているべきであるが、そのような処理がなされていないのはなぜかとの質問があり、被告佐々木が支出がなされたが、会計上の正式な処理がなされていないことを認める答弁をしたこと、右質疑応答は秘密会でなされたこと(〔証拠略〕)、

(二一)  飛永は、同年九月下旬ころ又は同年一〇月上旬ころ、中野目に対し、同年八月三一日付けで本件財団の設立認可が下りる見通しが立っていたが、本件大学建設資金調達の見通しが十分でなかったので、本件財団設立認可申請を取り下げたこと、これは右建設資金が一年以内に調達できない場合には、本件出資金が私学振興財団に没収されてしまうので、一旦申請を取り下げて右建設資金の調達ができる見通しが立った時点で再度申請する予定であったからであり、なお右建設資金の調達については、出資者と交渉中であること、学校法人と本件財団についての認可申請は特別枠で並行して審査中であって、平成六年四月ころに本件大学が開学する見込であると説明したこと、中野目は右説明を受けて、開学とは学校法人の認可を得た段階をいい、生徒を募集する段階で開校というと理解していたこと(〔証拠略〕)、

(二二)  泉崎村議会同年第四回定例会が、同年一二月一四日から同月一七日までの会期で開催されたこと、右議会において、原告良子が、本件財団の設立認可申請の文部省に対する提出日、受付日、受付番号を質問したことに対し、中野目は申請書の提出日が同年二月二七日であり、文部省、厚生省、自治省の審査を受けており、審査期間が第三次審査まであるため、受理月日及び整理番号は連絡がないと説明し、また、白石が本件財団設立手続が前記進捗表どおりに文部省における第二次審査の段階に進捗しているのかを質問したことに対し、被告海上が進捗表どおりに進捗していると解釈してもらって差し支えない旨を答弁したこと、右村議会は秘密会でなかったこと(〔証拠略〕)、

(二三)  泉崎村議会平成五年第一回定例会が、平成五年三月一〇日から同月一五日までの会期で開催されたこと、右議会において、被告海上が、飛永らから本件大学設立計画が順調に進行していることを確認しており、平成五年度中に本件財団を設立し、平成六年開校に向けて計画を具体化させる予定であって、ただ開校の時期が平成七年にずれ込む可能性があることを答弁したこと(〔証拠略〕)、

(二四)  中野目は、飛永から、株式会社第一勧業銀行五反田支店の本件委員会宛の同年六月二一日付け発行の同月一八日現在の定期預金残高証明書を受領したこと、同証明書に記載の残高は金三億五〇〇万円であったこと馬飛永から、右金員の内金三億円は泉崎村の本件出資金で、内金五〇〇万円は他からの寄付金であると説明を受けたこと(〔証拠略〕)、

(二五)  泉崎村議会同年第三回定例会が、同年九月二七日開催され、中野目が白石の質問に答えて、村から本件財団設立のための出資金として金三億円を支出したこと、内金一億五〇〇〇万円については寄附金を得てこれを拠出したこと、残金一億五〇〇〇万円についても公募により寄附を募る予定であったが、本件財団の設立認可申請時に残高証明が必要であったため、特別会計から一般会計に繰り入れて支出したことを説明したこと、そして、白石が、本件財団を設立するために、金三億円を出資しながら、出資金として会計処理がなされていないのはなぜか、平成四年度の決算の際にも右同様の問題について質問していたにもかかわらず、対応が変化していないのはなぜかと質問したことに対し、被告住々木が本件委員会に管理を任せているのでと答え、さらに、中野目及び田崎が、本件財団は正式に認可となっておらず、そのため本件財団に対し、右出資を証明する書面の提出を要求できないと説明したこと、同村議会は一般に公開された議会であって秘密会ではなかったこと(〔証拠略〕)、

(二六)  被告らは株式会社第一勧業銀行五反田支店の本件委員会宛発行にかかる同年一二月一六日付けの同月一五日現在の定期預金残高証明書を受領したこと、残高は金三億五〇〇万円であったこと、中野目は同月ころ大学設置認可申請書を受領したこと(〔証拠略〕)、

(二七)  平成六年一月一六日付け新聞朝刊に、本多が日米医学医療交流財団の基本財産金三億円を横領した疑いがある旨が掲載されたこと(弁論の全趣旨)、

(二八)  原告東八及び原告良子が同年二月二三日、文部省を訪ねて、本件財団設立手続について照会したところ、文部省の担当官は、大学の名前も申請があったことも知らないと答えたこと(〔証拠略〕)、

(二九)  原告ら、井上一成、兼子清幸及び兼子喜一が同年三月一〇日付けで泉崎村監査委員に対し、本件住民監査請求を行い、本件財団に対して支出されるべき本件出資金が、本件財団が設立されていなかったため、本件委員会に対して支出されたこと、本件財団の設立認可の見通しがないことから、被告海上において、本件委員会に対して本件出資金の返還を請求するべき義務を負っているといえるとともに、被告海上において本件出資金を他の用途に費消されないように管理すべき義務を負っており、本件委員会の運営委員長であり、本件大学設立のために活動してきた本多が、自ら理事長の地位にあった本多記念病院の経営に失敗して同病院理事長職を辞任した外、また自ら理事長の地位にあった日米医学医療交流財団の基本財産を業務上横領したとの嫌疑で同財団から告訴を受け、同理事長職を辞任し、本件準備委員会の運営委員長をも辞任したために、本件委員会がその実体を失い、本件出資金が費消された疑いがあるのに、被告らにおいて、本件出資金について、泉崎村の出資台帳に記載をせず、本件委員会に対して本件出資金の返還を請求しないでいるのは、泉崎村の公有財産の管理を怠るものであるとして、監査委員から被告海上に対して右怠る事実の改善及び泉崎の損失の補填のための措置を講じることを請求したこと(〔証拠略〕)、

(三〇)  泉崎村議会全員協議会が同月一七日開催され、右協議会において、飛永は、本件大学設立に関し、「文部省に対する申請は言葉のあやですよ。既に金三〇〇億円の寄付金が第一勧業銀行本店の社団法人アジア経済研究会名義の口座に預金されており、本件金三億円も同店の委員会名義の口座に入っているが、銀行が決算期のため分離できず、残高証明書を入手できなかった。同年四月に第一次申請を行い、同年七月には第二次申請を行う」と説明して、本件財団の設立認可申請しておらないことを述べたこと、泉崎村当局も右によりはじめて、本件委員会が、本件財団設立申請を出す準備をしながら実際に申請を行っていなかったことを知ったこと(〔証拠略〕)、

(三一)  進捗表によれば、本件大学設立計画は左のとおりであり、その内容は平成三年一二月ころ発行された広報「いずみざき」に掲載された本件大学の設立手続予定と同様であること、

(1) 平成四年二月二八日ころ、本件財団設立認可についての、第一次審査申請を行うこと、

(2) 同年三月中旬以降第一次審査を受け、同年四月下旬ころ、右申請に対する判定結果の通知がなされること、

(3) 同年七月三一日ころ、第二次審査申請を行うこと、

(4) 同年八月上旬以降第二次審査を受け、同年一二月中旬ころ、申請に対する通知がなされること、

(5) 平成五年六月三〇日ころ、第三次審査申請を行うこと、

(6) 同年一二月中旬ころ、本件財団設立認可の答申がなされ、同じころ、認可がなされること(〔証拠略〕)、

(三二)  本件委員会が文部省に対し本件財団設立認可申請を行った事実は存在しなかったこと(〔証拠略〕)、

(三三)  原告良子及び同野崎は右の当時村議会議員であり、右審議に携わっていたこと(〔証拠略〕)、

以上のとおり認められ、右認定に反する証拠は容易に措信できない。

3  そこで、右認定の各事実に基づき、原告らの本件住民監査請求について法二四二条二項ただし書の「正当な理由」があるかどうかを判断する。

右認定の、平成三年一一月及び平成四年六月の二回の公開の村議会において、泉崎村が本件財団に対し、金三億円を出資金として支出する議案について審議され、議決されたこと、同年四月の泉崎村の広報誌にも金三億円を出資金として支出することが報道されていたこと、同年九月の定例会及び平成五年九月の公開の定例会でも、泉崎村が金三億円を本件出資金として支出したことを前提とする質問があり、支出後の会計上の処理が議論されたこと等の各事実に照らせば、本件出資金の支出自体がきわめて秘密裡になされたとは認められない。

次に、右の事情に加えて、平成四年六月、「財界ふくしま六月号」誌上に、文部省に対して本件財団設立申請がなされていないとの報道がなされたこと、中野目らは、平成四年三月の村議会で、本件財団設立認可申請日を同年二月一七日と報告していたのに、同年一二月の定例会においては、右申請日を同年二月二七日であると変更し、同定例会において、原告良子から本件財団設立認可申請の受理日及び受理番号について質問があったところ、中野目が右の点については連絡がなく分からないと答弁をしたこと、被告海上又は中野目らの村議会における答弁によれば、一方で同年二月に申請があったといいながら、他方で同年一二月になってもまだ受理日、受理番号について連絡がなく分からないというのであって如何にも不自然であること、平成五年九月の公開の定例会において、被告佐々木、中野目、田崎らが本件財団は設立されておらず、本件出資金について村の出資として正式な会計上の処理ができないことを答弁したこと、したがって、平成五年九月時点では、本件出資金が本件財団ではなく本件委員会に支出され、しかも、本件委員会に対する本件出資金の支出について、出資として会計上の処理がなされない等、違法・不当性を疑わせる徴候が顕れており、もし右徴候から被告海上及びその部下職員の村議会における答弁について疑義を覚え、道接、文部省の担当官に照会する労さえ取っていたならば、担当官は公明正大な態度で、本件財団の設立認可申請を受けたりその事前指導を求められたこともない旨の回答を出したはずであり、その情報が得られさえしたならば、本件出資金の本件委員会に対する支出をもって本件財団に対する支出と同一視することができるかの問題の核心に迫ることになること、平成三年一一月一三日の村議会において交付された進捗表では、平成五年一二月中旬ころには、本件財団の設立認可が得られる予定が記載されており、同年三月の村議会までは進捗表どおり同年一二月に認可を得る予定であるとの答弁がなされていたのに、同年九月の村議会では、同年一二月中旬ころに進捗表どおりに認可となるとの答弁はなされなかったこと、実際にも平成五年一二月までに認可がなされなかったこと、平成三年一二月発行の広報「いずみざき」にも進捗表と同内容の本件大学設立経過予定が掲載されており、右広報誌は泉崎村の住民一般に対して配布されるものであることを併せ考慮すると、平成五年九月ころには、本件出資金の支出に関して関心を有する住民が相当の注意を払って、右の経過を検討すれば、遅くともこのころまでには、本件出資金の各支出が本件財団ではなく、本件委員会に対してなされたことを知ることができ、本件委員会に対する支出について、被告らが説明している如く、これをもって本件財団に対する支出と同一視することができるかどうか疑義を覚えることもできたはずであり、ひいては本件出資金の支出に不当があると疑うことができたと認めることができる。

このことは、被告ら及び中野目らは、飛永らの前記説明を鵜呑みにして、本件財団設立認可申請がなされたことが実際には一度もなかったのに、被告らが本件財団設立認可申請が平成四年二月一七日又は同月二七日になされたとか、被告ら又は中野目らが、財界ふくしま六月号の前記記事は虚偽内容であるとか、平成四年一二月も、平成三年一一月一三日開催の村議会において配布された進捗表どおりの進捗状況であるとか答弁したこと、したがって、被告らの答弁が真実に反する内容を述べたものであり、結果的に原告らを欺くことになったこと、これが、被告らの、本件委員会の活動状況に対する十分な調査を怠った重大な不注意に基づくものであると認められることを併せ考慮しても左右されない。

そして、前認定の、原告らの本件住民監査請求が、右の平成五年九月から約五ケ月間を経過した後になされていること、進捗表で認可が得られる予定であった平成五年一二月中旬を経過しても文部省から認可が実際に得られなかったこと、本件住民監査請求が右の時点からも約二ケ月間以上を経過していることが認められる。

以上の各事情を総合考慮すれば、原告らの本件住民監査請求が本件出資金の各支出から一年間以上を経過してなされたことに、法二四二条二項ただし書の「正当な理由」があるとまでは認められない。

したがって、本件訴えは適法な住民監査を経ていないものと認められる。

二  結論

以上の次第で、原告らの本件訴えは不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、地方自治法二四二条の二第六項、行政事件訴訟法四三条三項、二条、七条、民事訴訟法九三条一項本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木原幹郎 裁判官 林美穂 吉井隆平)

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